一方、歩の方は? 22話)
(あーあ。びっくりした・・。)
茉莉が去って行った後の扉を見つめて、歩は胸を撫で下ろしていた。
なぜなら・・。
彼女が扉をノックする間際まで、歩はあるビデオをつけて鑑賞していたからだった。
残っていた執務の途中で、気晴らしに見ていて、ノックの音を聞いた瞬間、ビデオを停止させていた。
テレビの電源も落とし、すぐさま仕事に戻るフリをして、要件を聞こうと思って顔を上げた瞬間。茉莉の姿を認めて動揺した。
とてもじゃないが、冷静な会話ができる状態ではなかった。
早々に部屋を出て行ってもらい、もう一度ビデオを見ようとして、すっかり気分が削がれてしまっているのでやめにする。
デスクから離れると、テレビの下に設置してあるビデオテープを取り出して大事にしまいこんだ。
何気にチラリと自分の手で題名を示した表題を目にして確認し、歩は満足げな顔を浮かべた。
その題名には・・。
河田家。高野家。両家の結婚式。

ネット小説ランキング>恋愛シリアス(PG12)部門>「Mary’s Story」
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(週1回)